図書館職員のおすすめ

 

【12月のおすすめ本】

kurisumasuwotannteito「クリスマスを探偵と」


伊坂 幸太郎/文
マヌエーレ・フィオール/絵
河出書房新社

 

舞台はドイツの小さな町。クリスマスイブの晩、ある人物を尾行していた探偵のカールは、公園でサンドラと名乗る不思議な男に出会います。尾行相手が建物から出てくるのを待つ間、カールはサンドラととりとめのない話に花を咲かせますが、話はやがてクリスマスにまつわる苦い思い出にも及び・・・。

今や人気作家となった作者が、大学時代に初めて書いた小説をもとに、文章をすべて書き直して完成させたという本作。短編ながら、軽やかさやカラリとした明るさ、ちょっとファンタジックな要素など、作者らしさが存分に味わえます。イタリアの漫画家による印象的な挿絵も、物語の世界を生き生きと浮かび上がらせています。

ふたりのささやかな謎解きの先に待つ、幸福などんでん返し。この季節にぴったりの、優しく温かな物語です。  


sugusununndakara「すぐ死ぬんだから」


内館 牧子/著
講談社

“いい歳のとり方をしたい”誰もが一度は願うことではないでしょうか。

常にファッションやメイクに気を配り、自分磨きに余念のない78歳のハナは、「人生で一番よかったのはハナと結婚したこと」が口癖の、自他共に認める愛妻家の夫・岩造と幸せな隠居生活を送る日々。
そんな中、折り紙だけが趣味の真面目な夫だったはずの岩造の急死をさかいに、思いもよらない裏切りが発覚し…。
「すぐ死ぬんだから」。暗くて後ろ向きの言葉に思われがちですが、この小説を読むと良い意味にも悪い意味にも変えるのは自分次第、さまざまな感情や意味が込められていると実感します。
クスッと笑えるハナさんの毒舌や衝撃の展開。痛快ながらもきれいにまとめられ、かっこよくて素敵な『ハナさん』の虜になってしまう小説です。 


issyoninoborou「いっしょにのぼろう」


マリアンヌ・デュブク/作
さかたゆきこ/訳
TAC出版

 

ちいさな山のふもとにアナグマのおばあさんが暮らしていました。

日曜日には山に登って小鳥とおはなししたり、友達のキツネのためにキノコをとったり、困っている友達を見かければ助けてあげたり・・。

ある日、ねこのぼうやルルと出会い一緒に登ることに。
初めて登るルルは知らないことばかりで、アナグマのおばあさんから知恵や思いやりを学び二人で山に登るようになりました。しかしアナグマのおばあさんは、からだが弱って登れなくなり、一人で登っていると、新しい友達と出会い、誰かの大切な場所へと受け継がれていきます。

流れる時間がとても穏やかで、子どもや大人の方にもおすすめな1冊です。 


「ピアノをきかせて」pianowokikasete


小俣 麦穂/著
講談社

 

想像の中で、音楽の情景を描き、歌ったり踊ったりすることが好きな響音。
姉の千弦はピアノのレッスンやコンクールで忙しく、付き添いに行く母とも生活がすれ違い気味です。

卒業式でのこと。
響音は、姉のピアノがおかしいと感じます。昔のようないきいきとした楽しさが感じられなかったのです。同じく千弦の変化を感じた父は、ショックを受ける響音のことも心配します。
そんな時、響音は音楽教室の仲間とふるさと文化祭で音楽劇をすることになります。姉の混迷は続いており、コンクールに出た後は、まったくピアノを弾かなくなってしまいます。自分たちの音楽劇を最高のものにして、千弦の心を助けたいと願う響音。もう一度、姉の心に音楽の灯を灯そうとする思いは、やがて家族の絆も取り戻していきます。


【11月のおすすめ本】

「看る力 ~アガワ流介護入門~

阿川 佐和子/著
文藝春秋

「聞く力」がベストセラーとなった作家・阿川佐和子氏が、アガワ流の介護の入門書とも言える本を今回執筆した。
著者自身、「老人ホームに入るくらいなら、自殺してやる」と言っていた父で作家の阿川弘之氏を介護してきて、三年前に看取った経験を持つ。そして現在は、認知症の母を介護している真っ只中なのだが、高齢者医療の第一人者 大塚宣夫氏と理想の介護や理想の老後について、興味深い例と共に語り合う形式で話が進んでいく。
本書は家族編、夫婦編、そして看られる覚悟編の三部構成で、「好物は喉にはつまらない」、「恋は長寿の万能薬」、「名刺をつくる」などなどの名言に、「そうなんだ!」と介護のヒントを得たようで、心が楽になる方も少なくはないだろう。
誰しも「死」は選べないので、体力と判断力のあるうちに、介護する側、される側の両面から、自分が「看られる」側になった時のことを検討しておくことが得策らしい。
さて、人生100年と呼ばれる今、あなたは「看る」側、「看られる」側の備えはできているだろうか?


「黒板アート甲子園作品集 高校生たちの消えない思い」

日学株式会社/総監修
日東書院本社

学校の黒板をキャンバスにしてチョークで絵を描いた作品が「黒板アート」として、近年注目を集めています。その黒板アートの全国大会が2015年から開催されるようになり、本書では2018年までの応募作品の中から約250点以上の作品が掲載されています。
写実的な作品もあれば、コミック風の作品、有名な絵画のオマージュまで、作風も多岐にわたっています。
いつも目にしている教室の黒板とチョークで、ここまで表現できるなんて!
ちなみに島原の某高等学校の作品も収められています。全国の高校生たちの熱意の込められた作品をぜひ一度ご覧ください。


「シランカッタの町で」

さえぐさ ひろこ/作
にしむら あつこ/絵

フレーベル館

「よわっち」とあだなをつけられた主人公かずきは、運動も苦手で、気弱な少年です。
幼稚園のバザーで、不思議なおばあさんから万華鏡を見せられます。そこからシランカッタの町に迷い込み、キズカという女の子に出会います。
シランカッタの町で、いくつもの困難を経験するごとに、勇気をもってトラブルに立ち向かい、知らなかった自分の力に気づくことができます。
“誰にももう一人の自分がいる。弱気になったり、めげそうになったりした時、もう一人の自分が力を貸してくれる” 鏡に映ったかずきとキズカ、実は二人は・・・!?
ちょっぴり自信の持てない子どもたちや、友だちとの関係に悩んでいる子に、読んでもらいたいと思う本です。    


「すきま地蔵」

室井 滋/文
長谷川 義史/絵

白泉社

室井 滋さん、長谷川 義史さん名コンビの最新作です。
ビルのすき間から出られなくなった、昔話で有名な〝笠地蔵″がご先祖様のお地蔵さん一家に頼まれて、小学生の「ぼく」が、困っている人々のために町中で大活躍。
東では泣いている赤ちゃん、西ではさびしそうにスーパーのレジに立つおばさんのところへと東西南北かけまわり、みんなを笑顔にします。
「ぼく」が助けてくれたお礼に、おばあちゃんが作ってくれたキンチャクとヨダレかけをつけたお地蔵さん一家のかわいい笑顔にも注目!!思わずにっこりせずにはいられません。
ぽかぽかあったかーい気持ちで、胸がいっぱいになる絵本です。


     
【10月のおすすめ本】

「 敬語で旅する四人の男 」

麻宮 ゆり子/著
光文社   

 

母から来た1枚のはがきにより佐渡島へ行くことにした真島は、たまたま会社の先輩にそのことを話してしまう。すると、どういう訳か一人旅のつもりだった佐渡島旅行へ同伴者が増えていき、いつしか互いによく知らない、男四人組で旅することに…。

一つの旅で一人ずつ明かされていく、それぞれの素性と抱えている現実。平凡な人生の中にも苦しいことや辛かった過去がある。ひょんなことから集まった四人が旅の中で、そんな人生の「苦しい現実」「愉快じゃない思い出」にちょっとだけ向き合っていくお話。

軽妙な会話にはクセになる面白さがあり読みやすい。また四人のさっぱりとして深入りしない、それでいて思いやりに溢れている心地よい関係が読んでいてうらやましくなる。

鍵となる人物は知的なイケメン、斎木先輩。先輩は噂が立つほどの美しい顔立ちとクールな性格の持ち主なのだが、実は医者の診断がつくくらい人とのコミュニケーションが苦手なのだ。全てが計画の通りでないとパニックになってしまうし、人の感情を上手く読み取れない。そんな斎木先輩の発言は時に場を和ませ、時に人を怒らせ、周囲を巻き込んでいく。でも人とは違う視点でものを見る斎木先輩の言葉はいつも真っすぐで、時にハッとさせられる威力を持つのだ。

読んだ後に「この四人の続き、もっと読みたいなー」と思ってしまう一冊。


妻が願った最期の「七日間」「 妻が願った最期の『七日間』  」

宮本 英司/著
サンマーク出版

 

病気だった妻が亡くなった後、夫(著者)が新聞に投稿した記事をきっかけにして、この本は始まります。
出会いから50年を迎えた夫婦の人生が、妻が最初に書き、夫がそれに対する返信を書くという交換日記のような形で、「二人の物語」として綴られています。

出会い、毎日の電話、お互いの性格、結婚後生活、ペアのTシャツ…など、妻と夫のやり取りを読み進めるうちに、読んでいる私自身の人生のさまざまな記憶が蘇ってきました。

病気療養中、病院での生活は不安を抱え、体力がなくなり、痛みがひどくなります。すると、自分の家で特別何でもない時間を楽しく過ごせるだけでも幸せを感じるように…。
妻の日記を読むと、思いやりに溢れている夫婦の関係がうらやましくもあり、家族が一番なのだと改めて感じられ、生活の中のささやかなことが大事に思えてきます。

最後の方にもっとも著者が伝えたいメッセージが…
平凡な夫婦の人生が飾らない言葉で綴られているからこそ、共感できます。

11月22日は「いい夫婦の日」。ぜひ読んでみてください。


osikkotyoppirimoretarou「おしっこちょっぴりもれたろう」

ヨシタケ シンスケ/作・絵
PHP研究所

 

何度も口に出して言いたいと思えるタイトル。
可愛らしさとおもしろさに、子どもも大人もクスッと笑える絵本です。
子どもの悩みを可愛らしく表現しながら、みんなそれぞれ悩みがあるということを教えてくれます。
男の子のお母さんに共感してもらえることまちがいなし。何度読んでもおもしろい素敵な作品です。


「本屋さんのルビねこ」honyasannnorubineko

野中 柊/作
松本圭以子/絵
理論社

 

ルビは、本屋さん「本の木」のかたすみでほこりから生まれた小さなねこ。店主モシモさんとふたりぐらし。ルビは本に囲まれているので、どこかへ行かなくても動物のことや外国のことや、広い海のこと・・・何でも知ることができました。

ルビは、毎日おいしいものを食べ、お昼寝をしたり、絵本をめくったり、本屋さんの看板ねこになるための想像を膨らませたり、穏やかで幸せな日々を送っていました。

そんなルビにも誰にも言っていない悩みがありました。しかし、モシモさんと出会い、友だちができ、本や、本好きのお客さんに囲まれて、少しずつ成長していきます。そしてやがて、自分を見つめ直します。何があってもけなげに頑張る純粋なルビの姿がとても愛らしく癒されます。

モシモさんは毎朝「本の木」の看板を出す時にこうつぶやきます。
「もしも本の神さまがいるのなら、求めているひとが求めている本に、物語に、言葉に出会えますように」

本への愛情がたっぷりつまった優しく温かいファンタジー、読書の秋におすすめしたい一冊です。